土壌中で嫌気性メタン生成菌によって生成されたメタンが、植物の維管束を通して大気中に放出されることは以前から知られていました。一方で、好気条件で植物自身がメタンを生成・放出することが、2006年に報告されました。しかしながら、植物によるメタン生成と放出の分子機構や、それに対する葉圏微生物の影響については不明な点が多く残されています。IPCC報告書の全球メタン収支でも、植物あるいは植物−微生物共生系の寄与については考慮されていません。
当研究室では、葉圏C1微生物と植物のインターフェースにおいて、植物によるメタンの生成と大気への放出がどのような機構で起こるのか、また、メタンに加えメタノールの生成・放出に葉圏C1微生物がどのように寄与するのかを、植物-微生物間相互作用の観点から明らかにする研究を進めています(図4)。また、当研究室では葉圏C1微生物の代謝生理機能を活用したメタン排出削減技術の開発も進めています。これまでに、様々な植物試料からメタン資化性細菌の探索を実施し、葉圏にメタン資化性細菌が棲息すること、特に水生植物−メタン資化性細菌共生系が高いメタン消費活性を示すことを見出しました。現在は、様々な環境の葉圏でのメタン資化性細菌の分布動態の解明にも取り組んでいます。

図4.葉圏微生物共生系インターフェースにおけるメタン・メタノール生成と大気への放出機構<
【この項目に関する総説】
1) Yurimoto H. Plant Biotechnol. 42:193-201 (2025).
2) Iguchi H., et al. Microorganisms, 3:137-151 (2015).
