研究室へのお誘い

阪井教授
阪井康能教授

私たちの研究室では、主に微生物がもつ細胞機能について様々なアプローチにより本質的に理解し(分子細胞生物学:生き物ってどうやって生きてるのか?ということを分子のレベルで理解する)、有用タンパク質の生産や資源・環境問題解決のために応用利用することを目指しています。研究内容は、一見、全く関係がないように見える「タンパク質代謝とオルガネラの分子細胞生物学と異種遺伝子発現」「資源・環境問題解決に向けた微生物研究」というのが2つの大きな研究テーマですが、これは独立した2つの柱というよりは、むしろ研究室の縦軸と横軸といった関係です。特にメタノール資化性酵母は、当研究室において世界で初めて発見したという歴史をもち、分子細胞生物学研究から工業レベルでの有用タンパク質生産まで幅広く利用され、研究テーマの縦軸と横軸を担っている最も中心的な研究材料です。一方、研究室の研究成果は、各分野でトップクラスの海外専門誌やGordon conferenceなどの一流の国際学会で数多く発表され、国内はもとより世界中の研究者や分野から高い評価を受けています。

研究室では、自主性を尊重することはもちろんのこと、自分の研究テーマに縛られず、幅広い基本的な知識と技術が得られるよう、同一テーマのグループ内だけでなく、直接、研究テーマには携わらない学生でも活発な議論と技術交流ができるよう、ざっくばらんで自由な雰囲気作りを目指しています。

講義や学生実験・課題研究で習得する基本的な知識や研究を進めるための技術は別にして (実は、この習得だけでも、それなりに時間はかかるのですが…)、基本的には大学は自分で勉強するところです。自分で文献を調べ、自分で計画をたてた実験を実行に移して、成功だけでなく失敗をも含めた結果を経験として積むことが、目先の成果だけでなく、その後の研究生活あるいは就職後のその人の考え方に非常に重要であると考えるからです。すなわち自分だけの情報や経験を蓄積していくことこそが、その人の個性を育て独創性を生み出すための原点だと思います。例えば授業や講義のような画一的な情報、あるいは指示された実験を機械的に遂行するだけで、その人は成長することができるでしょうか?また、研究室は論文生産工場でもありません。同時に個人として得た経験を、セミナーなどを通して、研究室の他の仲間と共有することこそ、研究を推進する力となるのです。

応用生命科学では、技術開発や技術の習得は、重要な一面であり、私たちも、微生物分離・培養技術やタンパク質の精製・遺伝子工学など、基本的な生命科学の実験手法のみならず、細胞生物学研究のための最新技術と機器を導入してタンパク質生産やプローブ開発などを含めた技術開発研究も同時に行っています。数年間を研究室で過ごせば自然にこのような技術を習得することができ、就職のために有利であると考える学生諸君も多くおられると思います。確かにそういう一面はあるかもしれませんが、最新技術だけに目を捕らわれていてはいけません。哀しいかな、最新の先端的な技術であればあるほど、10年立てば陳腐化しまう例もたくさんあります。問題は、新しい技術を使って何をしたいか、何をしなければならないのか、という目的を明確にして、技術開発のターゲットを見出すことが最も大切なことなのです。ターゲットを新たに見出す能力と、検証しながら新たな技術をものにしていく作業こそが、最先端の技術開発分野に携わる人材に求められる知識でありコンセプトであるというのが複数の一流企業研究者の話です。

私は、研究室に入られたら、サイエンスの研究活動を通して、「生き物のおもしろさ」「人と環境のために役立つことの素晴らしさ」を、なるべく早く経験して頂き、制御発酵学研究室で学んだ経験を、卒業後の皆さんの人生に生かして頂くことが、大学の研究室にとって一番大切なことだと思っています。もちろんそのために、我々の研究をトップレベルで維持することは必須条件です。

制御発酵学で、「自分の可能性にチャレンジしてみたい」という方、そこに情熱を注ぐ価値のある面白いあるいは意義のある研究をしていると思います。我々の研究テーマに興味のある方・やる気のある方はもちろんのこと、「ちょっとおもしろそうだから」、「一度、話を聞いてみよう」、きっかけは何でもよいと思います。一度、話をしにきませんか?そんな会話の中から自分のやりたいことや自分でも気づかなかったあなたの個性が見つかることは、意外に多いように思います。

「よく学び、よく遊べ」の精神に則り、ソフトボールは常に優勝を目指して毎日熱心なトレーニングを、そして飲み会も頻繁にやっています。

未来の制御発酵メンバーの貴方とともに、このような研究生活をエンジョイできることを楽しみにしています。

制御発酵学分野教授 阪井康能